中国を旅行したことがある人なら一度は目にしたことがあるだろう。
夜市の屋台に並ぶ、見たこともない串焼き。レストランのメニューに書かれた、理解不能な料理名。そして何より、現地の人々が当たり前のように口にしている、日本人からすれば「ありえない」食材の数々。
中国には、私たち日本人の想像を遥かに超える食文化が存在している。それは時に驚愕を、時に恐怖を、そして時に純粋な好奇心を呼び起こす、まさに未知なる世界なのだ。
広大な国土を持つ中国では、地域ごとに異なる気候や歴史的背景から、実に多様な食文化が発展してきた。特に広東省では「四足のものは机以外何でも食べる」という言葉があるほど、食材の幅が広い。これは決して冗談ではなく、実際に現地を訪れれば、その言葉の意味を身をもって理解することになるだろう。北京の夜市、広州の市場、四川の食堂。あらゆる場所で、私たちの常識を覆す料理が待ち受けている。
なぜ中国人はこれほどまでに多様な食材を口にするのか。その背景には、長い歴史の中で培われた「食べられるものは無駄なく頂く」という哲学がある。また、漢方医学の影響も大きく、多くの珍しい食材が健康や美容、滋養強壮に良いとされてきた。つまり、私たちが「ゲテモノ」と呼ぶものの多くは、現地の人々にとっては伝統的な健康食品であり、日常の一部なのだ。
この記事では、そんな中国の驚くべき食文化の中から、特に衝撃的な20種類の料理や食材を厳選して紹介する。あなたの食に対する固定観念は、きっと大きく揺さぶられることだろう。
蛇料理:これぞ広東の冬の名物、スネークスープの世界
人生で初めて「蛇」を食べてきました!
なんでも香港では寒くなると「蛇スープ(蛇羹)」を食べるのだとか…!🐍
身体をあたためてくれて、低脂肪、高タンパク、栄養豊富で滋養強壮に💪、、、私は案外いけた!!!😳✨ pic.twitter.com/yuPKi8A0iS
— cocoa☕香港在住Voicy毎日新聞パーソナリティ (@cocoa_in_china) November 22, 2023
中国のゲテモノ料理を語る上で、まず外せないのが蛇料理だ。特に広東省や香港では、冬の寒い時期になると「蛇羹」と呼ばれる蛇のスープが大人気となる。日本人にとって蛇は恐怖の対象かもしれないが、広東では高級食材として扱われ、専門店も数多く存在している。
蛇羹は複数種類の蛇を使用し、鶏肉や豚肉、キノコ、生姜などと一緒に長時間煮込んで作られる。完成したスープには細かく裂いた蛇肉が入っており、その食感は鶏肉のささみに似ているという。味わいは淡白で上品、スープ自体は濃厚でコクがあり、体が芯から温まると地元の人々は絶賛する。蛇肉には滋養強壮効果があるとされ、特に男性に人気が高い。冬場になると、家族連れで蛇料理専門店を訪れる光景も珍しくない。
蛇料理の歴史は古く、2000年以上前から中国南部では食されてきたという記録がある。漢方医学では蛇は体を温め、関節痛やリウマチに効果があるとされ、薬膳料理としても重宝されてきた。現代でもその信仰は根強く、健康志向の強い人々が積極的に摂取している。
調理される蛇の種類も多様で、コブラ、マムシ、水蛇など、さまざまな種類が使われる。特にコブラは高級品とされ、一杯のスープが数千円することも珍しくない。蛇専門店では、生きた蛇を店頭で捌いて見せることもあり、その光景はまさに圧巻だ。新鮮さを証明するためのパフォーマンスでもあるが、初めて見る観光客は驚きのあまり言葉を失うという。
蛇咬雞:毒蛇に噛ませた鶏肉という狂気の料理
蛇料理の中でも特に物議を醸しているのが「蛇咬雞」だ。これは文字通り、毒蛇に鶏を噛ませて殺してから調理するという、にわかには信じがたい料理である。毒蛇の毒が鶏肉に回ることで、肉質が変化し、独特の風味が生まれるという触れ込みで提供されていた。
この料理の発想の背景には、毒をもって毒を制すという中国医学の考え方がある。毒蛇の毒には薬効があるとされ、それが鶏肉に染み込むことで、より強力な滋養効果が得られると信じられていた。しかし、実際には衛生面や動物愛護の観点から大きな問題があり、現在では多くの地域で禁止されている。
かつて一部の地域で提供されていたこの料理は、高額な値段設定にもかかわらず、好奇心旺盛な客や滋養強壮を求める客に人気があったという。しかし、毒の危険性や動物虐待の問題が指摘され、2000年代に入ってから徐々に取り締まりが強化された。現在では、衛生当局が厳しく監視しており、提供している店を見つけることは困難だ。
それでも、一部の農村部や非合法な店舗では、いまだに提供されているという噂もある。ただし、安全性が全く保証されないため、興味本位で試すことは絶対に避けるべきだろう。この料理の存在は、中国の食文化の奥深さと同時に、時に行き過ぎてしまう側面をも象徴している。
犬肉料理:タブーを越えた食文化の現実
伝統か?虐待か?「犬肉祭」
世界最大の犬肉消費国の中国、南部の玉林市で、犬肉を食する夏至恒例の祭りが今年も始まる。
犬の扱いが残酷だとして毎年世界から抗議が寄せられ、この市場は、犬肉食を支持する人たちと動物愛護活動家との戦いの場となっている。… https://t.co/6kaIG65fx6 pic.twitter.com/whNcgU7mgz— syounan.tansuke (@STansuke) June 11, 2025
中国の一部地域では、犬肉を食べる習慣が今も残っている。
これは日本人を含む多くの国の人々にとって、最も受け入れがたい食文化の一つだろう。犬を家族の一員、ペットとして愛する文化圏の人々にとって、犬を食べるという行為は想像を絶するものだ。しかし、中国の特定地域、特に広西チワン族自治区や吉林省などでは、伝統的に犬肉が食材として扱われてきた。
犬肉は「香肉」とも呼ばれ、特に冬の寒い時期に体を温める食材として重宝されてきた。広西チワン族自治区の玉林市では、毎年夏至の時期に「犬肉祭」が開催され、大量の犬肉が消費されていた。この祭りは国際的な動物愛護団体から強い批判を受け、近年では規模が縮小している。
調理法としては、鍋料理や炒め物、串焼きなど多様だ。味わいは独特で、羊肉に似ているとも言われるが、特有の臭みがあるため好みが分かれる。犬肉を食べる習慣は、主に年配の世代に残っており、若い世代では犬をペットとして飼う人が増えているため、徐々に消費量は減少傾向にある。
中国政府も動物愛護の観点から、犬肉消費について慎重な姿勢を見せるようになってきた。2020年には深圳市と珠海市が犬肉と猫肉の消費を禁止する条例を制定し、他の都市も追随する動きを見せている。国際的な批判や国内の世論の変化を受けて、犬肉文化は転換期を迎えているといえるだろう。
野味料理:机以外は何でも食べる広東の真実
「野味」とは野生動物の肉を指す言葉で、広東省を中心に根強い人気がある食材群だ。ウサギ、野鳥、カエル、ワニ、カメ、タケネズミなど、実に多様な動物が食材として流通している。
広東では「空を飛ぶものは飛行機以外、四足のものは机以外、泳ぐものは船以外なんでも食べる」という言葉があり、これは決して誇張ではない。
野味が人気の理由は複数ある。まず、野生動物の肉は家畜に比べて脂肪が少なく、引き締まっていて美味しいとされる。また、漢方医学的な観点から、野生動物には特別な薬効があると信じられてきた。さらに、珍しい食材を食べることが富や地位の象徴とされる文化的背景もある。高級レストランでは、希少な野味を使った料理が高額で提供され、ビジネスの接待などで重宝されてきた。
カエル料理は比較的ポピュラーで、鶏肉に似た淡白な味わいが特徴だ。「田鶏」と呼ばれ、炒め物や煮込み、火鍋の具材として広く親しまれている。ワニ肉も専門店があり、スープや炒め物として提供される。食感は鶏肉と魚肉の中間のようで、独特の風味がある。カメは特に高級食材とされ、スープにして滋養強壮効果を期待して食される。
しかし、野味文化には大きな問題がある。野生動物の乱獲による生態系の破壊、絶滅危惧種の密猟、そして何より感染症のリスクだ。2003年のSARS、そして2019年に始まった新型コロナウイルスのパンデミックも、野生動物市場が発生源の一つとして疑われた。これを受けて、中国政府は2020年に野生動物の食用を全面的に禁止する決定を下した。しかし、長年の習慣は簡単には変わらず、一部では違法に取引や消費が続いているという報告もある。
サソリの串焼き:夜市で光る黒い悪夢
サソリとムカデみたいなやつの串焼きあった…
ゲテモノすぎる pic.twitter.com/5we7oKBfGM— YuRit (@Yurit_Tus) February 12, 2026
北京の東華門夜市は、かつて観光客に大人気のスポットだった。そこで最も注目を集めていたのが、サソリの串焼きだ。生きたサソリを串に刺して油で揚げたこの料理は、見た目のインパクトが絶大で、多くの観光客が写真を撮りに集まった。実際に食べる人は少なかったが、勇気を出して挑戦する人もいた。
サソリの串焼きは、外側がカリカリで、中はやや柔らかい食感だという。味わいは海老のような風味があるとも言われるが、実際には調味料の味が強く、サソリ自体の味はあまりしないという意見も多い。栄養価は高く、タンパク質が豊富で、漢方医学では解毒や鎮痛の効果があるとされてきた。
サソリだけでなく、東華門夜市ではヤスデ、バッタ、コオロギ、カミキリムシの幼虫など、さまざまな昆虫類が串焼きで提供されていた。これらは単なる見世物ではなく、実際に栄養価が高く、タンパク質源として優れているという側面もある。国連食糧農業機関(FAO)も、昆虫食を未来の食糧危機を救う可能性のある選択肢として推奨している。
しかし、東華門夜市は2016年に閉鎖された。観光客が増えすぎたことによる交通渋滞や、衛生面での懸念が理由だった。現在、北京で昆虫の串焼きを食べたい場合は、王府井小吃街などの他の夜市を訪れる必要がある。ただし、以前ほどの規模や種類は見られなくなっており、昆虫食文化自体が徐々に観光資源としての役割を終えつつある。
火鍋の真骨頂:内臓のオンパレード
一人食,今晚吃点中餐。
麻婆豆腐做得不错,地道!👍 感觉麻婆豆腐在日本到处都有。
第二个算是青椒炒牛肚吧,凑和。
第三个是毛血旺,里面没有大肠和鳝鱼,鸭血和午餐肉倒是挺多。
第四个是炒饭,一人食,我都不用打包。😋 pic.twitter.com/jiZyeOBOmA— ワイタト (@ekkusushita) September 9, 2025
中国料理の中でも特に人気が高い火鍋。友人や家族と囲む鍋料理は、日本でも馴染み深い。しかし、中国の火鍋、特に四川や重慶の火鍋では、日本人が想像もしないような食材が当たり前のように投入される。その代表格が、各種動物の内臓類だ。
牛の胃袋である「毛肚」は火鍋の定番中の定番で、独特のコリコリとした食感が人気だ。新鮮なものを数秒だけ熱いスープにくぐらせて食べるのが正しい食べ方で、火を通しすぎると硬くなってしまう。「鴨腸」は鴨の腸で、クネクネとした見た目に抵抗がある人も多いが、シャキシャキとした食感と濃厚な味わいがたまらないという愛好家も多い。
豚の脳みそ「猪脳」も火鍋の具材として人気だ。クリーミーな食感で、スープに溶け出す濃厚な味わいが特徴。見た目は完全に脳みそそのものなので、初見では躊躇する人がほとんどだろう。牛の血を固めた「毛血旺」は、豆腐のような食感で、スープの味をよく吸い込む。鉄分が豊富で、貧血予防に良いとされている。
その他にも、牛の喉の軟骨部分「黄喉」、豚の動脈「郡肝」、鴨の舌「鴨舌」など、部位ごとに細かく分類された食材が火鍋店のメニューには並ぶ。これらは決してゲテモノではなく、それぞれに独特の食感と味わいがあり、火鍋には欠かせない存在だ。中国人にとっては、これらの部位を上手に食べられることが、食通の証でもある。
鶏足と鴨脖:爪と首を食べる文化
コンビニエンスストアでスナック菓子のように売られている鶏の足「鶏足」と鴨の首「鴨脖」。これらは中国全土で愛されている庶民的なおつまみだが、日本人にとっては完全にゲテモノの範疇だろう。特に鶏足は、爪の形がそのまま残っており、ビジュアル的なインパクトが強い。
鶏足は「鳳爪」とも呼ばれ、蒸したり煮たり揚げたりと、調理法は多様だ。広東式の点心として提供される「蒸鳳爪」は、柔らかく煮込まれていて、骨から簡単に肉が外れる。コラーゲンが豊富で、プルプルとした食感が特徴だ。辛いタレに漬け込んだ「泡椒鳳爪」は、ピリッとした刺激と酸味が癖になる味わいで、ビールのおつまみとして最高だという。
鴨脖は鴨の首の部分で、骨についた肉をしゃぶるようにして食べる。肉自体は少ないが、濃厚な味付けと骨の髄から出る旨味が絶品だとされる。特に武漢発祥の「周黒鴨」というブランドが有名で、全国にチェーン展開している。スパイシーな味付けが特徴で、一度食べ始めると止まらなくなるという中毒性がある。
これらの部位料理が人気の理由は、経済的な背景もある。昔は比較的安価に手に入る部位であり、庶民の味として親しまれてきた。現在では商品化が進み、真空パックされた製品がスーパーやコンビニで手軽に購入できる。若者の間でも人気が高く、SNSで食べる様子を投稿することがトレンドになったこともある。
臭豆腐:この世で最も臭い食べ物の一つ
臭豆腐料理
これ見てからすごく食べたくなった pic.twitter.com/7rGZCgymbj— MARI (@MARIO3uju) February 8, 2026
中国のゲテモノ料理を語る上で、臭豆腐を外すことはできない。その名の通り、強烈な臭いを放つ発酵豆腐で、初めて嗅ぐ人は下水やゴミ、腐った卵のような臭いだと表現する。しかし、地元の人々にとっては最高のスナックであり、街角の屋台には必ずといっていいほど臭豆腐の店が出ている。
臭豆腐の製法は地域によって異なるが、基本的には豆腐を発酵液に漬け込んで作られる。この発酵液には野菜の切れ端、塩、時には小魚などが入れられ、数ヶ月から数年かけて発酵させたものだ。この液体自体が強烈な臭いを放ち、そこに豆腐を漬け込むことで、あの独特の香りが生まれる。
臭豆腐には大きく分けて二つのタイプがある。黒い色をした「黒臭豆腐」は主に湖南省や台湾で人気で、油で揚げて提供されることが多い。外はカリッと、中はトロッとした食感で、辛いタレをかけて食べる。白っぽい「白臭豆腐」は主に江蘇省や浙江省で食べられ、発酵の度合いがやや軽く、スープに入れたり蒸したりして食べる。
臭いは強烈だが、味は意外にもマイルドで、発酵食品特有の深い旨味がある。チーズやくさやなど、他の発酵食品が好きな人は、臭豆腐も受け入れられる可能性が高い。栄養価も高く、発酵によってタンパク質が分解され、消化吸収しやすくなっている。ビタミンB群も豊富で、健康食品としての側面もある。
皮蛋:悪魔の卵か神の卵か
「世界で最も奇妙な食べ物」の一つとして、しばしば海外メディアに取り上げられるのが皮蛋(ピータン)だ。アヒルの卵を強アルカリ性の泥や灰、塩、石灰などで包み、数週間から数ヶ月熟成させた保存食品である。完成した皮蛋は白身が黒または茶色のゼリー状に、黄身は緑がかった黒色のクリーム状になっており、切断面には美しい松の枝のような結晶模様が現れる。
皮蛋の最大の特徴は、その独特の臭いと味だ。アンモニア臭と硫黄臭が混ざったような香りがし、初めて嗅ぐ人は腐っていると勘違いすることも多い。しかし、これは発酵によって生じる正常な香りで、食べても全く問題ない。味わいは濃厚でクリーミー、独特のコクと旨味がある。
中国では皮蛋は高級食材ではなく、日常的に食べられる普通の食品だ。最も一般的な食べ方は、冷やした豆腐と一緒に盛り付けて醤油とごま油をかける「皮蛋豆腐」。さっぱりとした豆腐と濃厚な皮蛋の組み合わせが絶妙で、夏の定番料理として親しまれている。また、お粥に入れた「皮蛋痩肉粥」も人気で、朝食の定番だ。
皮蛋の歴史は600年以上前に遡る。もともとは卵の保存方法として開発され、冷蔵技術のない時代に長期保存できる貴重な食品だった。現在では伝統的な製法に加えて、より衛生的な工業生産も行われている。栄養価も高く、タンパク質、ミネラル、ビタミンが豊富に含まれている。
哈什瑪:カエルの脂肪で作る高級デザート
哈什瑪(はーしーまー、Hasma)は、中国東北部の雪蛙という特別なカエルの卵管周辺の脂肪組織を乾燥させた食材だ。見た目は白っぽい不規則な塊で、水で戻すと半透明のゼリー状に膨らむ。これを甘いシロップで煮込んだデザートは、高級料理店や薬膳レストランで提供される最高級のスイーツの一つだ。
この食材が珍重される理由は、その希少性と美容効果への信仰だ。雪蛙は中国東北部の限られた地域にしか生息せず、しかも採取できる量が非常に少ない。また、漢方医学では肺を潤し、肌を美しくする効果があるとされ、古くから宮廷料理としても使われてきた。特に女性に人気が高く、美肌やアンチエイジング効果を期待して食べる人が多い。
哈什瑪の食感は独特で、プルプルとしたゼリーのようでありながら、少しクニュクニュとした弾力もある。味は無味に近いため、調理では甘い味付けが基本だ。氷砂糖と一緒に煮込んだシンプルなデザートから、マンゴーやパパイヤなどのフルーツと合わせた豪華なデザートまで、さまざまなバリエーションがある。
価格は非常に高く、高品質のものは1グラムあたり数千円することもある。そのため、結婚式や重要な宴会などの特別な場面でしか食べられない高級品として扱われている。近年は乱獲による資源の枯渇が問題となり、より厳格な保護措置が取られるようになった。代替品として、他の魚類の浮き袋を使った類似品も流通しているが、本物の哈什瑪とは価格も品質も大きく異なる。
燕窩:ツバメの巣スープの真実
その後は東方燕窩と言うところで燕の巣をいただきました。
これで自然治癒力がupされるの間違えなしです!! pic.twitter.com/QX6ZiiGvAP— ベイスターズ (@bc012345678) March 21, 2024
中華料理の高級食材として世界的に知られるのが、燕窩(えんか)、つまりツバメの巣だ。正確には、アナツバメという特殊なツバメが自身の唾液を固めて作った巣を食材としたものだ。見た目は白っぽい半透明の固まりで、水で戻して調理する。最高級品は1キロあたり数十万円から数百万円という、まさに超高級食材である。
なぜツバメの巣がこれほど高価なのか。それは採取の困難さにある。アナツバメは主に東南アジアの洞窟や断崖絶壁に巣を作る。採取者は命がけで崖を登り、暗い洞窟の中で巣を採取しなければならない。また、ツバメが繁殖に使う巣を採取するため、乱獲を防ぐために厳格な規制がある。さらに、採取後も不純物を取り除く作業が大変で、熟練の技術が必要だ。
ツバメの巣は漢方医学において、滋養強壮、美肌、免疫力向上などの効果があるとされてきた。科学的にも、糖タンパク質や必須アミノ酸が豊富に含まれていることが確認されている。特に唾液酸という成分が多く含まれ、これが美容や健康に良いとされる。
調理法は主にスープで、甘いデザートスープとして提供されることが多い。氷砂糖と一緒にゆっくりと煮込み、プルプルとしたゼリー状になったツバメの巣を食べる。味は淡白で、食感を楽しむ料理だといえる。高級レストランでは、アワビやフカヒレと並ぶ最高級料理として、宴会のメニューに組み込まれる。
脳花:豆腐じゃない、本物の脳みそです
中国の火鍋や炒め物で、豆腐のように見える白い塊があったら要注意だ。それは「脳花」、つまり豚や羊の脳みそかもしれない。特に四川料理では、脳みそを使った料理が数多く存在し、地元の人々に愛されている。日本人にとっては究極のゲテモノかもしれないが、中国では普通の食材として扱われている。
最もポピュラーな料理は「紅焼脳花」で、豚の脳みそを辛い醤で煮込んだものだ。表面は少し焦げ目がついて香ばしく、中はトロトロとしてクリーミー。麻辣の効いたタレが脳みその濃厚さと絶妙にマッチする。また、「烤脳花」は焼いた脳みそで、屋台などでよく見かける。炭火でじっくりと焼き上げ、唐辛子やネギ、香辛料をたっぷりとかけて提供される。
脳みそは非常に柔らかく崩れやすいため、調理には技術が必要だ。新鮮なものを使い、血管や膜をきれいに取り除かなければならない。下処理が不十分だと、臭みが残って食べられない。栄養面では、レシチンやDHA、EPAなどの脳の健康に良いとされる成分が豊富に含まれている。「以形補形」という中国医学の考え方、つまり「形あるものは形あるものを補う」という理論から、脳みそを食べると頭が良くなると信じられてきた。
しかし、BSE(狂牛病)問題以降、牛の脳みその消費は大幅に減少した。現在流通しているのは主に豚や羊の脳みそだが、衛生管理には十分な注意が払われている。それでも、生物学的なリスクを考えると、信頼できる店で食べることが重要だ。
兎頭:ウサギの頭をそのままかじる衝撃
虚無兎
成都名物のウサギの頭 pic.twitter.com/jH1iMi9EKv— 中国史好きの一般諡法書生 C107 12/31西地区 “き”ブロック-41a諡法会 (@Sui_TangDaisuki) February 8, 2025
四川省成都の名物として知られるのが、兎頭(うさぎの頭)だ。文字通り、ウサギの頭をそのまま調理したもので、目や耳、脳みそまで全てついている。初めて見る人は、そのビジュアルに完全にノックアウトされるだろう。しかし、地元の人々にとっては最高のおつまみであり、ビールと一緒に楽しむ定番の夜食だ。
兎頭は主に香辛料と一緒に煮込まれ、麻辣味に仕上げられる。食べ方には作法があり、まず頭を二つに割って、中の脳みそをすする。次に頬の肉をしゃぶり、舌や目の周りの肉も丁寧に食べる。骨についた肉は少ないが、濃厚な味付けと相まって、非常に美味しいという。食べ終わるまでに30分以上かかることもあり、ゆっくりと味わいながら食べるのが正しい楽しみ方だ。
成都には兎頭専門店が数多くあり、中には行列ができる人気店もある。特に「双流兎頭」というブランドが有名で、お土産用の真空パック製品も販売されている。兎頭一つの価格は10元から20元程度(200円から400円)と、比較的手頃な値段で楽しめる。
ウサギ肉自体は、実は非常に健康的な食材だ。高タンパク低脂肪で、コレステロールも低い。ビタミンB群も豊富で、美容にも良いとされる。中国では古くからウサギ肉が食べられており、特に四川省では日常的な食材として親しまれている。兎頭はその中でも最も特徴的な料理だといえるだろう。
牛鞭と鹿鞭:男の威厳をかけた一品
中国のゲテモノ料理の中でも、特に男性に人気があるのが「鞭」系の料理だ。鞭とは動物のペニスのことで、牛鞭(牛のペニス)、鹿鞭(鹿のペニス)、驢鞭(ロバのペニス)などが食材として流通している。漢方医学では強壮効果があるとされ、男性機能の向上を期待して食べる人が多い。日本でいうところの精力剤のような扱いだ。
最も一般的な牛鞭は、スープや炒め物、火鍋の具材として使われる。下処理として茹でこぼしを何度も繰り返し、臭みを取り除く。食感はコリコリとしており、軟骨のような弾力がある。味自体は淡白で、調理法によって様々な味わいを楽しめる。高級レストランでは、鹿鞭を使った薬膳料理が提供され、一皿数千円することも珍しくない。
これらの食材が人気の背景には、「以形補形」の考え方がある。形が似ているものを食べることで、その部位が強化されるという伝統的な信仰だ。科学的な根拠は乏しいが、プラセボ効果も含めて、多くの男性がその効果を信じて食べている。特に中高年の男性の間で需要が高く、健康食品としても販売されている。
ただし、野生動物の保護が強化されている現在、鹿鞭などの入手は困難になってきている。養殖や家畜のものが主流となり、価格も安定してきた。それでも、伝統的な考え方は根強く残っており、需要は今も続いている。
毛蛋:孵化直前のヒヨコを食べる究極の卵
「毛蛋」または「旺蛋」と呼ばれる食材は、孵化直前のアヒルやニワトリの卵だ。中には既に羽毛が生え始めた胚が入っており、割ってみると小さなヒヨコの形がはっきりと分かる。フィリピンの「バロット」と同様の食べ物で、中国南部や東南アジアで広く食べられている。見た目のインパクトは計り知れず、これこそ真のゲテモノだという人も多い。
毛蛋は主に茹でたり蒸したりして調理される。殻を剥くと、半分液体、半分固体の内容物が現れ、その中に小さな胚が浮かんでいる。食べ方は人それぞれで、スープのような液体部分を吸ってから、胚ごと食べる人もいれば、胚は避けて周りだけ食べる人もいる。味は普通の卵よりも濃厚で、少し野性的な風味がある。
栄養価は非常に高く、タンパク質、カルシウム、鉄分が豊富だ。胚が成長する過程でアミノ酸も増加し、通常の卵よりも栄養価が高いとされる。地元の人々は、体力回復や病後の栄養補給に最適だと考えている。妊婦や子供にも良いとされ、家庭で日常的に食べられている地域もある。
毛蛋を食べることに抵抗がある人は多い。命が宿っている状態のものを食べることへの心理的な抵抗、そしてビジュアルの衝撃が大きいからだ。しかし、文化の違いを理解し、栄養価の高さを認識すれば、地域の伝統食として受け入れることもできるだろう。現地では屋台で気軽に買えるスナックとして親しまれている。
虫茶:虫の糞から作られる究極のお茶
昆虫食展に展示の追加です。世界の昆虫食コーナーに中国の虫糞茶、薬用昆虫コーナーに日本産の孫太郎虫を加えました。 pic.twitter.com/aG03doFdJs
— 伊丹市昆虫館(公式) (@itakon25) February 3, 2026
信じられないかもしれないが、中国にはある種の昆虫の糞から作られるお茶が存在する。「虫茶」または「虫屎茶」と呼ばれるこのお茶は、主に貴州省や湖南省の山間部で生産される非常に珍しい茶葉だ。特定の蛾の幼虫に茶葉やその他の植物を食べさせ、その糞を集めて乾燥させたものが虫茶となる。
製法は独特だ。茶葉や特定の植物の葉を幼虫が食べることで、葉の成分が消化され、糞として排出される。この糞には茶葉のエキスと昆虫由来の成分が混ざり合い、独特の風味を生み出す。糞は小さな粒状で、見た目は黒い胡麻のようだ。これを熱湯で煎じると、琥珀色の透明なお茶ができあがる。
虫茶の味わいは意外にも上品で、少し甘みがあり、爽やかな香りがする。緑茶やウーロン茶とは異なる独特の風味があり、飲みやすいという評価が多い。漢方医学では、虫茶には健胃、解毒、清熱の効果があるとされ、夏場の暑気払いに最適だと考えられている。
虫茶は非常に希少で、生産量が限られているため、価格も高い。高級品は1キロあたり数万円することもある。少数民族の伝統的な製法が今も受け継がれており、文化的な価値も高い。近年では健康志向の高まりから、都市部でも注目を集めるようになり、ネット通販でも購入できるようになった。ただし、偽物も多く出回っているため、購入には注意が必要だ。
童子蛋:少年の尿で煮た卵という衝撃
〈🇨🇳中国で最もクレイジーな珍味「童子蛋(とうじたん)」〉
🎦 この中国の料理は「バージン・ボーイ・エッグ」と呼ばれています。これは、10歳未満の男の子の尿でゆでた卵で、この料理は浙江省の東陽市で見つけることができます。
この料理の中国語名は「童子尿煮鶏蛋(Tongzi Niao Zhu… pic.twitter.com/PgW7w5lkiA
— Nobby Raelian (@NobbyRaelian) December 29, 2025
浙江省東陽市には、信じがたい伝統食が存在する。「童子蛋」、つまり10歳以下の男の子の尿で茹でた卵だ。これは地元の無形文化遺産にも登録されている伝統食品で、春になると街中で作られ、販売される。日本人だけでなく、多くの外国人、そして中国の他地域の人々にとっても、最も理解しがたい食文化の一つだろう。
製法はシンプルだ。小学校などで男児の尿を集め(もちろん健康な子供のもの)、その尿で卵を一日中煮込む。煮込んでいる間、卵の殻に少しひびを入れて、尿が卵の中に染み込むようにする。完成した童子蛋は茶色く変色し、独特の香りがする。地元の人々は、これを食べると健康になり、夏バテを防げると信じている。
この習慣の起源は古く、少なくとも数百年の歴史があるという。伝統的な中国医学では、健康な少年の尿には薬効があるとされ、特に腎臓に良いと考えられてきた。科学的な根拠は全くないが、地域の文化として代々受け継がれてきた。春先になると、町中に童子蛋を煮る独特の臭いが漂い、地元の人々はそれを春の訪れを告げる風物詩として受け入れている。
価格は普通のゆで卵の2倍ほどで、一個2元から3元(40円から60円)程度だ。地元では普通に食べられているが、さすがに若い世代の間では敬遠する人も増えてきている。衛生面での懸念や、現代的な価値観との乖離から、この伝統がいつまで続くかは不透明だ。
蝙蝠:コウモリスープの衝撃的な事実
2019年に始まった新型コロナウイルスのパンデミックで、世界中が注目したのがコウモリを食べる習慣だった。中国の一部地域、特に広東省や雲南省では、コウモリが野味として食されてきた歴史がある。スープにすることが多く、「蝙蝠湯」として提供されていた。コウモリ全体を煮込んだスープで、見た目は非常にショッキングだ。
コウモリは漢方医学において、咳止めや気管支に良いとされてきた。また、精力増強の効果があると信じられ、一部の富裕層や健康志向の強い人々に需要があった。しかし、コウモリは多くのウイルスを保有している可能性が高く、人獣共通感染症のリスクが非常に高い動物だ。SARSやエボラウイルス、そして新型コロナウイルスも、コウモリが自然宿主である可能性が指摘されている。
新型コロナウイルスのパンデミック後、中国政府はコウモリを含む野生動物の食用を厳しく禁止した。野生動物市場も閉鎖され、違法な取引には厳罰が科されるようになった。しかし、長年の習慣は簡単には消えず、地下市場での取引が続いているという報告もある。
コウモリを食べる習慣は、人類の健康に重大なリスクをもたらす可能性がある。グローバル化が進んだ現代において、一地域の食習慣が世界中に影響を与える時代になった。この教訓から、野生動物の食用に対する意識は大きく変わりつつある。
挑戦するかしないか、それはあなた次第
ここまで、中国の衝撃的な食文化を20種類にわたって紹介してきた。蛇料理、犬肉、昆虫、内臓、脳みそ、そして尿で煮た卵まで。日本人の常識からすれば完全にゲテモノとしか思えないものばかりだろう。しかし、これらの多くは地元の人々にとっては普通の食べ物であり、長い歴史と文化的背景を持っている。
中国の食文化がここまで多様化した背景には、広大な国土と多様な民族、そして「食べられるものは無駄にしない」という実用主義的な考え方がある。また、漢方医学の影響も大きく、多くの食材が健康や美容に良いとされてきた。現代の栄養学から見ても、実際に栄養価が高い食材も多い。
もちろん、全ての習慣が良いとは言えない。野生動物の乱獲や、衛生面での問題、動物愛護の観点からの批判など、多くの課題がある。中国政府も近年、これらの問題に取り組み始めており、規制や取り締まりを強化している。食文化は変化していくものであり、グローバル化が進む中で、中国の食文化も徐々に変わっていくだろう。
しかし、異文化を理解することは重要だ。自分たちの価値観だけで他の文化を一方的に否定するのではなく、その背景や歴史を学ぶことで、より深い理解が得られる。もしあなたが中国を訪れる機会があれば、勇気を出して一つでも挑戦してみるのも良いかもしれない。臭豆腐やピータンなら、比較的ハードルが低く、美味しいと感じる日本人も多い。
文化の違いを体験することは、旅の醍醐味の一つだ。見た目や先入観に惑わされず、オープンマインドで接してみると、新しい発見があるかもしれない。ただし、衛生面や安全性には十分注意し、信頼できる店で食べることが大切だ。また、自分の体調や体質を考慮し、無理は禁物だ。
中国のゲテモノ料理は、確かに衝撃的だ。しかし、それは同時に、人類の食文化の多様性と適応力を示すものでもある。環境に応じて様々な食材を活用してきた人類の知恵の結晶ともいえる。
あなたは、これらの料理に挑戦してみたいと思うだろうか。それとも、遠くから眺めているだけで十分だろうか。いずれにせよ、この記事を通じて、中国の食文化の奥深さと多様性を感じていただけたなら幸いだ。


